和尚,コラム/伊藤若冲ゆかりの寺/宝蔵寺
- ご案内 -
現在本堂の拝観はしておりませんが、伊藤若冲親族のお墓はご自由にお参りしていただけます。 髑髏の記念スタンプ(紙朱印のみ)は、毎日10時〜16時(月曜日はお休み)の間授与いたします。 本尊(阿弥陀如来)のご朱印は、住職が在宅の場合のみ帳面に記帳させていただきます(不在時は紙朱印)。 また電話でのご予約はお受け致しておりません。 宜しくお願い致します。
あなたの怒りは何%?
子どもの通う中学校で「怒りの連鎖を断ち切ろう」というテーマのPTA研修会がありました。
講師の先生からの質問で「あなたは最近いつ怒りましたか?その怒りは何%ですか?」と問われ、前列にいた私が答えることになりました。「私が最近怒ったのは、試験前の息子が部屋で全然勉強をしていなかったことです!その怒りは80%です!」と答えました。次の質問で先生は「あなたにとって一番の怒りとは何でしょう?」と質問されました。その質問には同じく前列の校長先生が答えました。「それは、愛する我が子の命が理不尽に奪われた時です」とお答えになりました。先生は「そうですね。では先程答えられた方。我が子の命が理不尽に奪われた時が100%の怒りなら、子どもが勉強しないことへの怒りは何%になりますか?」。私は答えました「それは20%、かな」。私の怒りが一瞬に消え去って行きました。
我が子が今、生きている。元気でいてくれる。こんな幸せはないのかもしれません。
お釈迦様在世のころ、ある村に、キサーという女性が住んでいました。彼女は結婚して一人の子どもをもうけますが、夫は流行病で病死し、子どもも同じ病気で亡くなりました。キサーは悲しみのあまり子どもの死を受け入れることができません。来る日も来る日も我が子の名前を呼び続け、死んだ子どもを葬ることを許さず、村をさまよい続けました。
哀れに思った村の長老は、お釈迦様に事の次第をお話しし、お釈迦様はキサーを訪ねました。彼女はお釈迦様を見るなり「お釈迦様のお力でどうか、死んだ我が子を生き返らせてください!」。お釈迦様は「よろしい。では私の言う通りにするがよい。これからどこの家でもよいから、ケシの実を一粒もらっておいで。そうしたら薬を作ってその子を生き返らせてあげよう。ただし、一つだけ条件がある。それはその家から、まだ一度も死者が出ていない家に限る。その条件にかなった家の庭からもらってくるんだよ」。キサーは喜び勇んで村へ飛び出して行きました。
しかし、お釈迦様の言われた条件にかなった家など、何処にもありません。死者の出ない家はいくら訪ねても見つかりません。夕日が沈み、足を棒のようにして疲れきったキサーはお釈迦様のところに戻りました。
(釈迦) 「どうだったね。ケシの実はもらってきたかな」
(キサー)「いいえ。死者の出ない家など一軒もありませんでした。それよりお釈迦様!
私は今こそ目が覚めました!」
(釈迦) 「ということは?」
(キサー)「はい。どこの家に行ってみても、不幸を経験しない家、悲しみが何もない人など、
この世には決してあり得ないことが分かりました。私だけが不幸だと思っていたこと
は間違いでした。
それよりも今日から私をお弟子の一人に加えていただきとうございます!」
そういうとキサーはお釈迦様の前に平伏し、敬われるべき聖者の一人になりました。
人間としてこの世に生まれた以上、私たちには寿命があり、遅かれ早かれ100%、この世に別れを告げる時がやってきます。今、生きていることが、本当に有り難いことなのです。